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行き当たりばったりここに極まれり。


先日、例の如く、友人のよしあき(仮名)に突然の召集をかける。


よしあきは開口一番に
「今日は忘れられない夜になりそう…」
と、背筋が凍る様なけとを言い出す。


僕は完全に無視して、車を走らせた。


よしあきと僕は短い付き合いだが、お互いの波長が合ったのと、お互い夢中になるべき彼女もいなかったので、こうして夜な夜な集まっては特に意味のないことをしている。時々自分を見失って
「あいつが…あいつが来るぅぅ!!」
と言って見えない何かと戦う以外は問題ないし、一緒に居て苦にならない奴だ。


車は夜の街を颯爽と走り、ネオンが線となり、エンジン音だけが静かに響いていた。


「俺は本当はパスタが良かったんや。」


突然よしあきが喋り出した。

僕は何のことかわからなかったのでとりあえず無視した。

車内にまたエンジン音が響く。



長い時間の沈黙があった。

僕は夜の道をぼんやり眺めながら、少し感傷に浸っていたし、よしあきもそうなのだろうと思った。
夜の道は不思議とそういう気分にさせるのだろうと思い、一体何がそうさせているのだろうかと思考を巡らしていると、またしてもよしあきが口を開いた。

「ほうれん草…そう、ほうれん草パスタが良かってん。」


僕はよしあきの事を甘く見ていたとその時感じた。
よしあきは先ほどのパスタ発言からずっと、かれこれ1時間は走っていたのに、パスタの事だけを考えていたのだ。

僕が道路に等間隔で並んでいる街灯に何か神秘的なものを感じていたり、少し坂を登った所からの見下ろした景色に心奪われたり、この時間に1人で歩いている女性を見て何かドラマ的なものを感じたりしている間ずっと、彼は、よしあきはパスタの事を考えていたのである。


僕はよしあきからえもいわれぬプレッシャーを感じていた。

そうしている内に海が見える公園に着いた。

ぼんやりと海を眺め、その暗さに恐怖と美しさを見出していると、よしあきが今にも海に入水自殺しそうな顔でこう呟いた。


「せめてサラダバーにほうれん草があれば……」



その時僕は閃いた。そして今までのすべての発言を理解した僕は今日初めて、口を開いた。


「お前、今日は肉の気分じゃなかってんな…」


僕の言葉にバッと振り返るよしあき。その顔には涙が浮かんでいた。


「ごめん。俺、俺ぇぇ…」

今までせき止めていたものが一気に溢れてきたのだろう。 よしあきは泣き叫んでいた。









これ書いてたら試験に遅れそうになった。
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